
「アドルフに告ぐ」, “A duel to Adolf”
そして、「アドルフに告ぐ」、これはノンフィクションではないが、第2次世界大戦前後の世界を驚くほど鋭く描いている。ナチス・ドイツ、ソ連、大日本帝国に生きる人々の感情や思想を的確に描写していると思う。これだけの描写ができる漫画家は手塚を置いて他にはいないだろう。そして、この描写は現在起こっているイスラエルによるガザ地区などへの武力攻撃にも共通している。
And “A duel to Adolf,” although not a non-fiction work, depicts the world before and after World War II with amazing acuity. I think it accurately depicts the feelings and thoughts of people living in Nazi Germany, the Soviet Union, and the Empire of Japan. There is no other manga artist who can depict such things as Tezuka. And this depiction also has something in common with the current armed attacks by Israel on the Gaza Strip and other areas.
「アドルフに告ぐ」のあらすじ, Summary of “A duel to Adolf “
日本とドイツを舞台にして物語が展開する。物語の時代背景は1936年から1983年まで、その間には第2次世界大戦があり人類はかつてない深刻な経験をした。物語は、アドルフ・ヒトラーが1934年ドイツ国の最高指導者となった後、1936年に開催されたベルリンオリンピックの場面から始まる。主人公はだれだろう。表題の3人のアドフルかもしれない。ストーリーは新聞記者の峠草平が幾多の事件へ関与することによって進められる。
ナチス・ドイツ政権の政策は人種主義、特に反ユダヤ主義を中心的特徴とし、何百万ものユダヤ人及び「生きるに値しない命」に対するホロコーストが実施された。この中には、自由主義者、社会主義者、共産主義者も含まれた。このような人類史の深刻な負の遺産を告発することがこの物語の深層主題になっている。ここに登場する主人公はアドルフ・ヒトラーだ。運命の糸で結ばれるように、日本で2人のアドルフが生まれる。一人はドイツ人の日本大使と日本人の妻由季江との間に生まれたアドルフ・カウフマン、もう一人は、日本に移住したユダヤ人パン屋の息子アドルフ・カミルだ。二人のアドルフは神戸の互いに近くに住み小さい頃から大の仲良しだった。しかし、成長するにつれ二人は対立する人生を歩む。アドルフ・カウフマンは父によりドイツに送られヒトラーユーゲントの一員として成長する。優秀な成績を収めた彼は、徹底したユダヤ人排斥思想を持つようになる。他方、アドルフ・カミルは日本に住んでいて、ドイツで行われているような排斥はされないものの、ドイツの同胞ユダヤ人の虐殺事件などを聞くに及び反ナチス感情を強く抱くようになる。
日本とドイツを結び付け劇場型ドラマを展開させるのはヒットラーの家系に関する極秘書類の存在だ。この書類がドイツに留学し共産主義運動に加わった峠草平の弟から、秘密警察に殺される前に彼が信頼を寄せる小学校の小城先生に郵送されていた。小城先生は彼女が参加するファシズムに反対するグループの会合でそのことを話す。このグループは特高に赤いネズミ共として付け狙われてつかまる。辛うじて小城先生だけ逃げ延び峠草平に出会う。そこで峠草平は秘密文書の内容を見る。そして小城先生から託される。その書類の公表を防ぐためゲシュタポの人間が日本に派遣され殺人事件を起こしながら書類を探す。峠草平は主なターゲットにされ徹底的に追い詰められ殺されかける。また日本のファシズムに反対するグループも特高につけ狙われ捕まっては拷問される。
ドイツではアドルフ・カウフマンはナチス党員として活躍しヒットラーから勲章をもらう。ユダヤ人根絶の任務を迷うことなく実行できるよう、彼はユダヤ人の処刑を命じられる。彼の最初の犠牲者は日本からユダヤ人同胞の日本渡航を求めるためドイツ入りしたアドルフ・カミルの父だった。アドルフ・カウフマンはこのような殺人を続けることにより無感情にユダヤ人を虐殺するナチス党員になって行った。
やがて、ヨーロッパでナチスの敗退が続くようになる。日本ではアメリカに参戦後、日本の敗退が続くようになる。そのような時期に、アドルフ・カウフマンは例の書類の抹殺と関係者の口封じを命じられてU-ボートに乗り日本に入る。アドルフ・カウフマンは旧友のアドルフ・カミルに会って喜ぶが、話が進むにつれ、反ユダヤ感情と反ナチス感情に加え、父の殺害、婚約者の性的暴行の個人的恨みが極限にまで行きつく。また、アメリカ軍の空爆により多くの身内が死亡する。ここでゾルゲ事件が登場する。特高は1940年からゾルゲ事件の捜査を開始したとされている。リヒャルト・ゾルゲを頂点とするソ連のスパイ組織が日本国内で諜報活動を行っていたとしてその構成員が次々に逮捕された。その情報によってアドルフ・カウフマンが日本の特高と共にファシズムに反対するグループ関係者を拷問して秘密書類の隠し場所を探し当てる。書類は、中国人虐殺への反感から父の本多大佐の持つ軍の機密情報を左翼団体に漏洩していた息子によって庭に埋められ隠されていたのだった。まもなく、ドイツでヒットラーは自殺したと報じられる。これを知ったアドルフ・カウフマンは自分が道化だったと知る。
しかし、話はここで終わらない。ドイツに戻ったアドルフ・カウフマンはナチス狩りに会い、パレスチナに逃げる。そこで拳銃の腕を見込まれ、パレスチナの武装集団に加わりイスラエル人を殺害する活動を続ける。他方、アドルフ・カミルはイスラエルの戦闘員としてパレスチナ武装集団と戦うリーダーになる。そして、アドルフ・カウフマンの現地の妻と子どもが買い出しに行った街を偶然襲い殺害する。それを知ったアドルフ・カウフマンは激高する。そして、運命の対決の日が来る。アドルフ・カウフマンは「アドルフに告」ぐというチラシを作りアドルフ・カミルに決闘を宣告する。アドルフ・カウフマンは個人的怨念による決闘を止めようとするパレスチナ武装団体員をまず殺害し、アドルフ・カミルと決闘に臨む。アドルフ・カウフマンは死に、アドルフ・カミルが辛うじて生き延びる。しかし、彼も後にテロの爆弾のまきぞえで死ぬ。
しぶとく生き延びた峠草平は、約40年後の1983年にイスラエルにあるアドルフ・カミルの実家を訪問する。そこでカミルの妻と息子に会う。そして彼の経験を「アドルフに告ぐ」という物語にして「正義ってものの正体を少しばかり考えてくれりゃいいと思いましてね…つまんない望みですが」と告げる。これはアドフルと呼ばれた三人の男たちの物語である。三人はそれぞれ異なった人生をたどりつつ一本の運命に結ばれていた。最後のアドルフが死んだ今、この物語を子孫たちへ贈る。DAS ENDE